スポーツの常識が変わりつつある ― 動ける選手は“力を抜ける”
サッカーを指導していて特に強く感じることがあります。
それは、現代のスポーツにおいて「力を入れる」以上に重要なのは“力を抜く能力”だという事実です。
速く動く、しなやかに方向転換する、当たり負けしない、キックのフォームが安定する――。
これらの動作の裏側には「ゆるめる」と「締める」の絶妙な切り替えがあります。
育成年代では「体幹を固めろ」「軸を作れ」「ブレるな」という指導が繰り返されます。
もちろん間違いではありません。しかし、
固め続けてしまうと“動けない体”になってしまうことを、多くの選手が経験しています。
筋力トレーニングをしてもスピードが上がらない。
体幹トレーニングをしているのにキックの安定感が出ない。
股関節ストレッチを続けても動きが軽くならない。
それらの原因の多くは、
「ゆるめる」と「締める」の切り替えができていないことにあります。
本記事では、スポーツパフォーマンスの根幹となるこのテーマを、
股関節と体幹の働きを中心に “動作の本質” から解説していきます。
サッカー選手の動きを変える「ゆるめる×締める」の使い方👇
https://youtu.be/dineFmxVDXU

固めない体づくりが、動きの速さと安定を両立させる!
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なぜ“ゆるめる”ことが動きを劇的に変えるのか
動きのキレを高めるには、まず“ゆるめる”ことが欠かせません。

力みは筋肉と神経の流れを止め、動作全体を重くします。
股関節や体幹がゆるむことで、身体は反応しやすくなり、一歩目・切り返し・キック動作が軽く滑らかに変化します。
ゆるめることは、ただのリラックスではない
「脱力」と聞くと、ただ力を抜いたフニャっとした状態を思い浮かべる人も多いでしょう。
しかしスポーツにおける脱力はそれとは違います。
スポーツに必要な脱力とは、
“動き出しにブレーキがかからない状態を作る”ことです。
たとえば股関節が硬く、筋肉が常に緊張している選手は…
- ステップの一歩目が遅れる
- 切り返しで体がついてこない
- ストライドが伸びない
- キックのフォームが固まる
など、動作全体に「鈍さ」が生まれます。
これは、筋肉が硬いせいではなく、
筋肉を休ませる瞬間が無く、常に“力んだ状態”だからです。
力んでいると、神経による運動指令が途中で止まり、
股関節や体幹が滑らかに動かなくなるのです。
つまり「ゆるめる」とは、神経の通り道をスムーズにする作業そのもの だと言えます。
ゆるむことで反応速度が上がる科学的理由
身体がゆるんでいると、筋肉はすぐに動き出せます。
これは筋紡錘や腱の反射メカニズムに関係します。
固めてしまうと、筋肉の張力が高まり、
動作指令に対して “一瞬の遅れ” が生まれます。
一方、ゆるめた状態では筋肉が弾力を持ち、
脳からの指令に即座に反応できる。
サッカーで例えると…
- パスカットの一歩が速い
- 抜け出す瞬間の反応が鋭い
- ターンや切り返しに「タメ」が無い
- 当たりの前に身体の方向を調整できる
これらはすべて「ゆるめること」が前提条件です。
特に俊敏性(アジリティ)は
ゆるめることが“始まり”であり、締めることが“終わり” という構造で成立します。
誤解される“ゆるい動き”と本当の脱力
よく勘違いされるのは、「ゆるめる=弱々しい動き」という誤解です。
本当は逆で、ゆるめることで以下が生まれます。
- 動作のスピード
- 可動域の確保
- 神経伝達のスムーズさ
- 無駄なブレーキをなくす効率性
つまり 運動の準備段階を整える行為 が「ゆるめる」なのです。
良い選手を見ると、走る前に、蹴る前に、切り返す前に、
一瞬だけ フッと力が抜ける瞬間 があります。
これは感覚ではなく、科学的に説明できる「技術」です。
“締める”は“力む”とは全く違う ― 正しい締めの作り方
「締める」と聞くと“固める”と勘違いされることが多いですが、スポーツに必要なのは一瞬だけ力を逃さない技術です。
体幹や股関節は必要な瞬間だけ締まり、すぐに脱力へ戻ることで、速さ・安定・パワーを両立できます。

締める=ずっと体幹に力を入れることではない
体幹トレーニングの普及により、「常に腹筋に力を入れておくべき」と思い込んでいる選手が増えました。
しかしこれは大きな誤りです。
体幹を常に固めておくと…
- 股関節の動きが止まる
- 捻りが使えない
- ストライドが伸びない
- 呼吸が浅くなる
- 動作が“パワー頼り”になる
こうして、動きのしなやかさが失われます。
締めるとは “必要な瞬間だけエネルギーを逃さない構造を作ること” です。
つまり体幹を固定する時間は 一瞬でよい のです。
股関節での“締め”は「ハマり」を作る動作
締める=硬直ではありません。
もっと精密な現象であり、以下が起こっています。
- 大腿骨と骨盤の角度が適切に合う
- 筋肉の短縮が瞬間的に起こる
- 力が逃げずに地面反力を受け止められる
これを私は “ハマる”状態 と呼びます。
サッカーで最も分かりやすい例は キックの軸足 です。
軸足がハマっている選手は、
ボールの飛び・伸び・威力が段違いです。
逆に、ゆるみすぎていると…
- 軸がブレる
- ミートの位置がズレる
- 蹴り足のスピードが上がらない
締める瞬間を作れないため、力がボールに伝わらないのです。
締めと脱力の“波”こそが一流選手
世界のトップ選手を見ていると、締めと脱力の切り替えが驚異的に速い。
例えばスプリント時の脚。
- 股関節はゆるむ
- 接地の瞬間だけ締まる
- またすぐにゆるむ
この ON → OFF → ON → OFF のリズムが、動作の滑らかさ・速さ・効率をすべて決めます。
締めるだけの選手は「ゴツゴツした動き」になり、ゆるめるだけの選手は「力が伝わらない動き」になります。
両者のバランスを操作できる選手は、身体が止まらず、動き続ける特性 を持つようになります。
「ゆるめる × 締める」の組み合わせが動作を変える
動きを決定づけるのは、「ゆるめる」と「締める」の使い分けではなく、その“組み合わせ”です。

股関節や体幹がゆるんで方向を変え、締まって力を伝える。
この連鎖がスピードと安定を生み、サッカーの実戦動作を劇的に変えます。
体幹は“止める”のではなく“つなぐ”役割
体幹とは本来、上半身と下半身を滑らかにつなぐための“通路”です。
しかし固め続けると、この通路が塞がれます。
- キックの力が上半身に逃げる
- スプリントで重心が抜ける
- 接触プレーで押し負ける
「締める瞬間」だけ体幹が働くことで、
初めて地面反力を最大限に活かせます。
体幹は “連動の司令塔” であり、固定ではなく タイミングの操作 が本質です。
股関節は方向転換の司令塔
股関節が自由に動くことで、身体は初めて方向転換が可能になります。
ゆるめることで…
- 内旋外旋がスムーズに
- 骨盤の向きがすぐに変わる
- 次の一歩が出しやすい
締めることで…
- 切り返し時に踏ん張れる
- 接地の瞬間に推進力が生まれる
- 上半身の動きを下半身へ伝えられる
つまり、方向転換は「ゆるめて“向きを変える” → 締めて“力を出す”」の2段階で成立しています。
サッカー動作での実例
以下はゆるめる×締めるの切り替えが如実に現れる動作です。
一歩目の加速
ゆるむ → 重心移動がスムーズ
締める → 地面を強く押せる
キックの軸足づくり
ゆるむ → ボールに対して自由に位置を調整
締める → インパクト時の安定が上がる
ターンの動作
ゆるむ → 骨盤が回る
締める → 体軸を保てる
対人の当たり
ゆるむ → 力が逃げずに受けられる
締める → 反発が返せる
どの動作も ゆるめると締めるの両方が必要 であり、
一方だけでは技術が完成しません。
実践トレーニング
「ゆるめる」「締める」「切り替える」を身体にインストールする方法
サッカーのパフォーマンスを大きく左右するのは、
技術そのものよりも 身体の使い方(ムーブメントスキル) です。
股関節が硬い、体幹が弱い、筋力が足りない――。
こうした悩みの多くは、実は“ゆるめる/締めるの切り替えができていないこと”が根本原因です。
この章では、選手が身体の機能を最大限に引き出せるよう、
実際の指導現場でも効果の高い 3カテゴリのトレーニング を紹介します。

ゆるめる系トレーニング
脱力は動きの準備。関節が動きやすくなることで、筋肉の反応速度・可動域・神経の流れが改善します。
ゆるめる系トレーニング:股関節スウィング(前後)
― サッカーボールを蹴る「しなるフォーム」の土台をつくる ―
目的:股関節の脱力・可動域向上/背骨を軸にした連動性の獲得/一歩目の反応改善
方法
- 体の力みを抜く。
- 片脚を前後へ振るが、脚を“持ち上げる”のではなく 股関節が揺れて自然に動く 感覚をつくる。
- 次に左右にも振り、骨盤が背骨に対してしなやかに回る感覚を味わう。
- 動き全体を通して 太もも・腹筋・肩に力みがないか を随時チェックする。
ポイント
- 動きの中心は“脚”ではなく 背骨(脊柱)を軸にした股関節の遊び。
- 可動域の大きさより 滑らかさ・連動の自然さ を最優先する。
- 胸郭がガチッと止まらず、股関節と一緒に“ゆらぎ”ながら動いているか確認する。
- 最後にわずかにスピードを上げ、脱力したまま速く動けるか チェックする。
解説
サッカーのキック動作では、背骨を中心に“胸郭 → 股関節 → 蹴り足”が連動するしなやかな動き が求められます。
ところが、多くの選手は脚を上げるときに太ももの前(大腿四頭筋)で頑張ってしまい、股関節がロックされて動きが重くなっています。
股関節スウィングの目的は
- 脚を上げるのではなく「股関節そのものが揺れる状態」をつくること
- 胸郭と骨盤が背骨を中心に“ねじれながら”しなやかにつながること
- 力みのない状態で脚が自然に振り出されること
この3つを体で覚えることにあります。
サッカーボールを蹴る時のフォームに置き換えると、軸足の股関節がゆるみ、胸郭がわずかに回旋し、蹴り足が「しなるように」前へ振り出されます。
このしなりの土台が 股関節スウィングで得られる“脱力の遊び” です。
力みが取れることで、
- 一歩目の加速
- キックのミート感
- ターンの滑らかさ
これらが大きく変わります。
サッカーのフォームづくりにおいて、このエクササイズは もっとも基礎かつ必須となる“脱力の入口” です。
ゆるめる系トレーニング:体幹ローテーション(脱力版)
― 上半身の力みを取り除き、胸郭と腕を“しなやかにつなぐ” ―
目的:胸郭の自由度を高め、腕振りと股関節の連動を作る/キック・走りのフォーム改善
方法
- 足を肩幅に開き、上半身の力を抜いて立つ。
- 腕をダランと垂らしたまま、身体を左右へゆっくり振る。
- 肩甲骨 → 肋骨(胸郭) → 骨盤の順に、背骨を中心に波が伝わるように回旋させる。
- 動きに慣れてきたら、腕が“勝手に”ついてくるほど脱力しつつ、少しスピードをつける。
ポイント
- 肩・胸・腹筋を固めず、腕が自然に振られる状態が理想。
- 胸郭が滑らかにねじれ、腕の振りと股関節の動きが連動するか確かめる。
- 下半身を止めたままではなく、“胸郭の動きに骨盤が遅れてついていく”リズムを感じる。
- 反動を使いすぎず、あくまで 脱力で動く ことを優先する。
解説
サッカーの走り・キック・ターンには、必ず 胸郭の回旋 → 骨盤の回旋 → 股関節の動き という連鎖があります。
しかし多くの選手は、上半身に力みが入り、胸郭が固まってしまっているため、
- 腕が振れない
- 上半身と下半身がバラバラ
- キックの踏み込みで身体が回らない
- 走りの腕振りがぎこちない
こうした問題が起きやすくなっています。
この体幹ローテーションの目的は、背骨を中心に胸郭がしなやかに動き、その動きに腕が“連動してついてくる状態”を作ること。
上半身の力みがとれると、胸郭の回旋が脚の振り出し・股関節の回りに自然につながり、走りやキックのフォームが一気に軽くなります。
動画の動きの通り、腕を振ろうとせず「胸郭の動きに腕が勝手に振られる」感覚が身につくほど、スプリントやキックのパワーが増し、体のねじれが使えるようになります。
サッカーにおいて、この“胸郭の脱力×連動”は、スピード・キックのしなり・体幹の安定のすべてを底上げする必須要素です。
ゆるめる系トレーニング:寝たまま行う内旋・外旋のゆるめ
― 両足の“揺れ”で股関節の左右差を感じる ―
目的:体重がかからない状態で股関節の緊張をほどき、左右差を把握する
方法
- 仰向けになり、両膝を立てて 足幅は腰幅 にそろえる。
- 両脚を“ひとかたまり”として左右へゆっくり倒す。
- どちら側へ倒しやすいか、どちら側が重いかを感じながら、 内旋・外旋が自然に生まれる揺れを作る。
- 脚の力を使わず、骨盤と股関節が勝手に動くように脱力する。
ポイント
- 両脚で揺らすことで 左右の股関節の差 が明確に感じられる。
- 足幅を腰幅に保つと、股関節の奥(深層部)がより自然に動く。
- 太ももや腹筋に力を入れず、床に体を“預ける”ように動かす。
- 動かす回数より、滑らかさと脱力を最優先する。
解説
立位で股関節を動かそうとすると、
体重・バランス・周囲の筋緊張が影響し、
本来の可動域を感じにくくなります。
しかし仰向けで行うこの方法は、
重力の影響が最小限になり、純粋な内旋・外旋の動きが現れやすい のが特徴です。
さらに両足で揺らすことで、
- 右と左で倒しやすさが違う
- 限界角度に左右差がある
- どちらかの股関節が“ひっかかる”
といった差が把握できます。
この“差”はサッカーの動きにも直結します。
- 軸足の安定
- キックの振り抜き
- ターンの方向の得意/不得意
- 一歩目の加速の左右差
これらの土台には、股関節の内旋・外旋のしやすさが深く関わっているからです。
動画のように 脱力した揺れで奥の関節がほぐれる感覚 をつかむと、キック動作のスムーズさ、ステップの軽さ、切り返しの滑らかさが自然と変わっていきます。
寝たままのこのエクササイズは、股関節の“本来の動き”を取り戻す最も安全で効果の高い方法です。
寝たままの内旋・外旋は、床との接触で脱力しやすい反面、硬い床だと骨盤周りが緊張しやすくなります。
快適に行うなら、股関節まわりをほぐせるボールを用意すると効果が上がります。

締める系トレーニング
締めるとは、力むことではなく「力を逃さない瞬間を作ること」 です。
瞬間的な締まりができれば、動作のパワーが爆発的に上がります。
締める系トレーニング:片脚立ちの“股関節ハマり”エクササイズ
― キックの軸足で「地面反力を受け止める」感覚をつくる ―
目的:軸足の安定/キックフォームの土台づくり/着地で地面反力を受け止める能力の向上
方法
- 軽く脱力した状態で片脚立ちになる(キックのときの軸足をイメージ)。
- 膝はロックせず、ほんの少し曲げて「クッション」を残しておく。
- 上からストンと体重が落ちてきて、股関節にスッと乗る瞬間を感じる。
- そのタイミングで、脚・骨盤・脊柱が一本の柱のように「しめる」感覚をつくり、2秒だけキープ。
- 2秒たったら一度ふっと力を抜き、再び体重を股関節に乗せて「しめる→ゆるめる」を繰り返す。
ポイント
- ずっと締め続けない。体重が乗った“瞬間”だけ締めるのが重要。
- 太ももや上半身で無理に支えず、**股関節が地面反力を受け止める「受け皿」**になるイメージを持つ。
- 骨盤がグラつかず、脊柱がスッと空に伸びていく感覚があるかを確認する。
- キックの軸足をイメージしながら「ここでしめるとボールが飛ぶ」という感覚をつかむ。
解説
サッカーのキックフォームで、一番見落とされがちなのが 「軸足側のしめ」 です。
軸足がフラフラしていると…
- インパクトで上半身が崩れる
- ミートポイントが安定しない
- ボールにうまく力が伝わらない
といった問題が起こります。
キックの瞬間、軸足は地面に着地しながら 地面反力を全身で受け止める“柱” になります。
このときに必要なのが、
- 足首だけで踏ん張るのではなく
- 脚 → 股関節 → 骨盤 → 脊柱までが 一本のラインとして「しめる」こと
です。
このエクササイズでは、その“締める瞬間”をスローモーションで切り出し、
- 体重が股関節に乗る
- 地面反力を受け止める
- 脚・骨盤・脊柱が一本にしまり、体がブレなくなる
という流れを安全でシンプルな形で、体に覚えさせていきます。
ここで「しめる→ゆるめる」の切り替えがうまくできるようになると、
- キックのフォームが安定する
- ボールの飛び・伸びが良くなる
- 一歩目の押し出す力が強くなる
- 当たりで倒れにくくなる
といった変化が現れます。
“しめる系”の中でも、キックフォームの土台になる最重要エクササイズとして、ウォーミングアップや自主トレの最初に入れておく価値が高い種目です。
締める系トレーニング:メディシンボール・ブレーシング(頭上振り下ろし)
― 下半身で受け止め、上半身でブレーキをかける「しめる」練習 ―
目的:地面反力と上半身の力を同時に使い、体幹の“締める瞬間”を身につける
方法
- メディシンボールを頭上に掲げ、全身の力を抜いて構える。
- ボールを 頭上から大きく振り下ろし、胸の前でピタッと止める。
- 振り下ろした勢いを、
- 下半身は地面で 受け止めて踏ん張る
- 上半身は腕・胸・広背筋で ブレーキをかける という二方向の「しめる」で制御する。
- 止めた瞬間の力の集中を1〜2秒だけ保つ。
- その後は完全に力を抜き、再び頭上へボールを戻す。
ポイント
- 止める瞬間に 脚 → 股関節 → 体幹 → 胸・腕 が同時に「しめる」感覚をつくる。
- 下半身だけではなく、腕を含む上半身のブレーキ力 も大切。
- ボールを落とさないように“急停止”させる動作が、体幹の瞬間的な締まりを鍛える。
- 力を入れ続けないこと。しめる → ゆるめる の切り替えが最重要。
解説
このトレーニングは、動画で見られるように、メディシンボールの重さと勢いを全身で受け止める「瞬間のしめ」 を鍛える種目です。
サッカーの動作では、以下の場面で同じしめ方が必要です。
- キックの踏み込みで体が沈み込む瞬間
- 相手との当たりで体が後ろへ押される瞬間
- ヘディングやジャンプ着地で衝撃を受ける瞬間
- シュートのインパクト直前に体幹を固める瞬間
これらはすべて、
「全身で力をまとめて受け止める一瞬」 が存在します。
メディシンボールを頭上から振り下ろして止める動作は、
その一瞬の「しめる」動きを強調し、分かりやすく学べる最適な方法です。
特にこの動きには、
- 下半身は地面反力で踏ん張る
- 上半身はボールの勢いを腕・胸で止める
- 体幹は両方をつなぐ“受け皿”として作用する
という サッカー特有の全身連動 が含まれています。
止める瞬間に崩れず、すぐに脱力して次の動作へ移れる選手ほど、試合で強く・速く・安定して動けます。
このトレーニングは、その“締める瞬間”を安全に、しかも強力に養うことができます。
締める系トレーニング:ドロップスクワット
― 一瞬で“パワーポジション”を作り、地面反力を受け止める能力を鍛える ―
目的:瞬間的に下半身を安定させる/地面反力の吸収と再加速の準備能力を高める
方法
- 直立し、両手を頭上に伸ばした状態で脱力して構える。
- 両手を一気に振り下ろしながら、重心をストンと落とす。
- その勢いのまま、スクワット姿勢(パワーポジション)を一瞬で作る。
- 膝・股関節を同時に曲げ
- 胸がつぶれず
- かかとが浮かない自然な構え
- “止まった瞬間”に脚・骨盤・体幹が同時に ギュッとしまり、地面を受け止める感覚 をつくる。
- しめるのは一瞬だけ。すぐに脱力し、立ち上がって元の姿勢へ戻る。
- 10〜15回をリズムよく行う。
ポイント
- 一番大事なのは 「振り下ろす腕の勢い × しめる下半身」 の連動。
- 着地の瞬間、股関節・膝・足首が同時にしまり、体幹が反応して安定を作る。
- スクワットを“ゆっくり作る”のではなく、瞬間的にパワーポジションを生成するのが目的。
- 力むのではなく、しめる → ゆるめる の切り替えを明確にする。
- 首・肩・胸に余計な力みが出ないよう注意する。
解説
ドロップスクワットは、スポーツ現場でよく使われる “瞬間的に安定姿勢を作る能力”を鍛えるドリル です。
サッカーでは、次のような場面で必ずこの能力が必要になります。
- 相手の当たりを受けた瞬間
- キックの軸足が地面に着いた瞬間
- スプリントの切り返し
- ジャンプ着地からの再加速
- ボールコントロールに入る“止まる動作”
これらはすべて 地面反力の大きな衝撃を、瞬時に下半身で受け止める技術 が求められます。
動画のように、
上からの腕の振り下ろしによって体に勢いがかかると、その勢いを止めるために
- 股関節
- 膝
- 足首
- 骨盤
- 脊柱(体幹)
が 一瞬で「しめる」 必要があります。
この瞬間的な“締まり”ができる選手は、
- 反発力をすぐに次の動作へ変換できる
- 接触で倒れにくい
- スプリントやジャンプの質が上がる
- キックの踏み込みが強く安定する
というメリットを得られます。
とくにキック動作では、
軸足が地面を踏みしめる瞬間にこの“パワーポジション”が作れるかどうかで、ボールの伸びと安定度が大きく変わります。
ドロップスクワットは、その能力をシンプルかつ効果的に鍛える非常に優れたトレーニングです。
切り替え系トレーニング(最重要)
ゆるめると締めるの切り替えこそがスポーツ能力の本質です。
ここが習得できれば、どんな競技動作にも応用できます。
切り替え系トレーニング(最重要):ドロップスクワットからのカウンタージャンプ
― 脱力 → しめる → 反発 を一連で身につける切り替えトレーニング ―
目的:瞬時の沈み込み、パワーポジション形成、反発力の最大化/アジリティ・スプリントの基礎向上
方法
- 直立し、肩と腕の力を抜いた状態で構える。
- 両手を頭上へ上げ、腕の重みを使って ストンと脱力しながらドロップスクワットへ沈む。
- 沈んだ瞬間、脚・股関節・体幹が同時に「しめる」ことでパワーポジションを瞬間的に作る。
- その反発を利用して 真上へカウンタージャンプ。
- 着地したらまた脱力し、次のドロップスクワットへつなげる。
- これをリズムよく繰り返す。
バリエーション
① 片足ジャンプ → 両足着地
- 片足で跳ね、着地は両足。
- 片足での“脱力→しめる”の精度を高めつつ、着地は安定を優先させるバリエーション。
② 両足ジャンプ → 片足着地
- 両足の反発力を使ってジャンプし、着地は片足。
- 片足での地面反力処理(しめる)が強化され、サッカー動作に特に役立つ。
どちらも動画のように、「跳ぶ・着く」のたびに身体がしなるように吸収し、
必要な瞬間だけ締まることを意識する。
ポイント
- 最重要は “脱力して沈む → しめて止まる → 反発して跳ぶ” の時間差を極限まで短くすること。
- 沈み込みは深くしすぎない。素早く反応できる浅さが理想。
- 着地の瞬間に脚だけで踏ん張らず、股関節・骨盤・体幹を一体にして受け止める。
- 跳ぶ瞬間は腕も連動させ、上半身と下半身のタイミングを合わせる。
解説
このドリルは、スポーツ動作に欠かせない
「脱力 → しめる → 反発」
という3ステップを連続で身につける極めて重要な練習です。
サッカーでは特に、
- 一歩目のスプリント
- キック動作の踏み込み
- 着地からの次の動作
- 対人プレーの当たり
- 切り返しの減速→再加速
これらすべてで
一瞬の沈み込み(脱力) → しめる(パワーポジション) → 反発(推進力)
という流れが発生します。
動画のように、ただジャンプするのではなく、
“腕の振り → 沈み込み → しめて止まる → 跳ぶ” という連動を作ることで、
- 重心移動が速くなる
- 反発力が大きくなる
- 軸がブレず、無駄な力みが消える
- 切り返しの精度が上がる
というスポーツ能力の根幹が向上します。
特に片足着地のバリエーションは、
サッカーのキック・方向転換・着地などで必須となる
片脚の“しめる”能力を強化できるため非常に効果的です。
切り替え系トレーニング(最重要):ヘキサゴンラダーを使った一歩目トレーニング
― 脱力から一歩でスピードへ切り替える技術を磨く ―
目的:一歩目の加速/方向転換の初速アップ/脱力と締めの切り替え速度の向上
方法
- ヘキサゴンラダー(またはマーカー)を跨いで、股関節をゆるめた脱力姿勢で立つ。
- 上半身・肩・腕の力を抜き、どの方向にも動ける“ニュートラル”をつくる。
- 合図と同時に、指定された方向へ一歩目を最速で出す。
- 正面方向 → スプリント
- サイド方向 → シャッフル
- 斜め方向 → クロスステップ
- 動き出したらすぐに脱力し、再びラダーを跨いだリラックス姿勢に戻る。
- これを数秒間隔で繰り返し、方向をランダムに変えて反応性を高める。
ポイント
- 最重要は「脱力 → しめて踏み込むまでの時間」を極限まで短くすること。
- 脚力よりも 股関節の“向きを変えるスピード” が一歩目を支配する。
- 正面・横・斜めで動き出しの質が変わるため、全方向の一歩目を鍛えることが必須。
- ラダーを跨ぐ姿勢は、体が軽く跳び出せる“浮いた状態”をつくるための準備。
- 肩や腕に力みが入ると一歩目が遅くなるため、腕の脱力も常にチェックする。
解説
動画で行っている動きは、サッカー選手の「初速の速さ」をつくるために非常に効果の高いドリルです。
多くの選手は「速く動こう」と考えた瞬間に身体が固まり、
股関節の向きが変わらないため一歩目が遅くなります。
しかし本質は “力む前に動き出せるか” にあります。
ヘキサゴンラダーを跨ぐ脱力姿勢は、
- 下半身に余計なテンションがない
- どの方向にも動けるニュートラルポジション
- 股関節の回旋がスムーズに出る
という、一歩目に最適な準備状態 を作り出します。
そして合図と同時に、
- ゆるめたまま素早く股関節の向きを変え
- 一歩だけしめて地面を押し
- 正面・横・斜めへ瞬間的に加速する
という一連の動作が求められます。
これはサッカーの試合中、
- 相手のボールタッチに反応
- スペースへの抜け出し
- ディフェンスの寄せ
- セカンドボールへの反応
など、すべてに直結します。
とくにサイド方向のシャッフル、クロスステップは
守備のスライドや攻守の切り替えで極めて重要です。
このトレーニングで「脱力 → しめる → 加速」の切り替えが洗練されると、一歩目の速度は確実に上がります。
切り替え系トレーニング(最重要):ステップ台を使ったカウンタームーブ
― 着地の“しめ”から一歩目へつなげる切り替えトレーニング ―
目的:着地衝撃のコントロール/反発を使った加速/方向転換の初速アップ
方法
- 約30cmのステップ台に立ち、脱力した姿勢で構える。
- 台からストンと降り、両足(または片足)で着地する。
- 着地の瞬間に、**股関節・膝・体幹が同時に「しめる」**ことで衝撃を吸収する。
- しめた直後に脱力し、反発力を利用して動き出す。
基本動作
- 両足着地 → 前方へ素早くスプリント。
バリエーション
- 片足着地 → 前方へスプリント
- 片足着地 → 横方向へシャッフル
- 片足着地 → クロスステップで斜めへ移動
着地の方法を変えることで、方向転換に必要な“片脚のしめ”を強化する。
ポイント
- ステップ台から“落ちる勢い”を利用し、脱力のまま着地する。
- 着地の瞬間だけ ギュッと締めてパワーポジションを作る。
- しめるのは一瞬。その後すぐに脱力しないと動き出しが遅れる。
- 足裏全体で受け止め、膝だけでなく股関節が衝撃を吸収すること。
- 横方向やクロスでは、股関節の向きがスムーズに変わっているか確認する。
解説
ステップ台からのカウンタームーブは、
サッカーの「着地からの動き出し」を最も現実的に再現したトレーニングです。
試合では、
- ジャンプ着地からの二次動作
- 相手との接触後の切り替え
- スプリント→ストップ→再加速
- キック後の着地からの守備反応
など、着地 → しめる → 動き出す の動作が連続します。
動画のように台から降りると、
通常より大きな衝撃(地面反力)が返ってくるため、
- 股関節が“受け皿”になる
- 膝だけでなく脚全体で衝撃を吸収する
- 体幹が一瞬締まってブレを抑える
という、動きの土台が強化されます。
さらに、片足着地では
- 軸足でのしめ
- 股関節の回旋の速さ
- 方向転換の初速
が大きく鍛えられます。
特に横方向シャッフル・クロスステップは、
守備のスライドや攻守の切り替えに直結するため、
サッカー選手にとって非常に実戦的な動きです。
このトレーニングを行うことで、「着地のブレーキ → 脱力 → 一歩目の加速」が一連の流れとしてスムーズに習得できるようになります。
ゆるめる × 締めるが身についた選手の変化
ここまで紹介したトレーニングを実践すると、選手の身体には以下のような変化が起こります。

動きの無駄が消え、スピードが向上する
締める瞬間が正しく作れると、
力の伝達ロスがなくなります。
同時にゆるめることで身体がフワッと軽くなり、
加速・減速・方向転換が滑らかになる。
キックフォームが安定する
軸足のハマりが改善し、
体幹の締めるタイミングが揃うため、
- ミートのズレが減る
- ボールの回転が安定
- インパクトの威力が上がる
特に育成年代の選手は、
“力み”が消えるだけでキックの質が別次元に変わります。
ケガのリスクが大幅に減る
脱力して可動域が確保されていると
関節や筋肉に無理がかかりません。
締める瞬間を体が理解していれば、
着地や衝突で身体が崩れません。
その結果、
- 肉離れ
- 足首の捻挫
- 膝の痛み
- 腰痛
などの慢性トラブルも改善していきます。
試合中の“余裕”が生まれる
体が柔らかく反応し、必要な瞬間だけ力を出せると、
プレー中に余計な消耗がなくなります。
- 判断スピードが速くなる
- 体力の消耗が減る
- プレッシャーの中でも動きが乱れない
トップ選手ほど“余裕のある体”を持っています。
まとめ
ゆるめる × 締めるは、すべての競技動作の“基礎言語”である。
ここまで解説してきたように、ゆるめる・締めるは相反する動作ではなく、両方があってはじめて速さ・強さ・安定が両立する。
固める指導が主流だった時代から、
“動ける体を作る”現代的アプローチへと移行する今、
選手が身につけるべきは筋力以上に “身体の使い方” です。
- ゆるめて可動域を引き出す
- 締めて力を伝える
- 切り替えでスピードを生む
この3つが揃ったとき、選手の動きは間違いなく変わります。
特に股関節と体幹は、スポーツ動作の中心に位置する“最重要パーツ”です。
本記事の内容が、選手の身体を変え、プレーを変え、怪我を減らし、パフォーマンスが向上するきっかけになることを願っています。

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